愛情いっぱいの気持ちが、当たり前だった頃は、
その一枚がどんなにかけがえのないものか分かりもしなかった。
毎年一回、父が張り切ってカメラを準備する。
今年は菜の花畑で撮ろう、とか。思い立って旅先で、全員並びなさいと急に始まったり。
その熱意と裏腹に、よくわからないままカメラの前に立たされた子供たちは
こけしみたいな顔で、時には不機嫌に。
一番嬉しそうなのはいつも父でその父に寄り添う母もなんだか嬉しそう。
写真なんて照れくさくて、恥ずかしいと思った時もあったけど、
喧嘩しながら撮ったあの頃が、懐かしくて、愛おしくて。
いつか、今よりもっと先の私たちに贈り物を。
写真を撮ろう。年に一度の家族写真。
photographer 宗石佳子