映画とごはんの会 伊藤碩男翁追悼『山に生きるまつり』
第34回 映画とごはんの会
伊藤碩男さん追悼『山に生きるまつり』
【日時】
2025年12月19日(金)
〈夜の部〉満席となりました
2025年12月20日(土)
〈昼の部〉15時上映開始(14時30分開場)〜17時 終了
〈夜の部〉満席となりました
【会場】信陽堂アトリエ(文京区千駄木3-51-10)
【定員】各10人
【参加費】夜の部:4000円 昼の部:2000円(税込 現地支払)
『山に生きるまつり』
1970年/38分/自主制作/宮崎県西都市銀鏡 文部省選定
【作品解説】
宮崎県の山村、銀鏡[しろみ]の銀鏡神社で、厳粛に霜月(旧暦十一月)のまつりが行われる。そこで行われる三三番の神楽は古風な山の文化を伝えており、一九七七年(昭和五二)には国の重要無形民俗文化財に指定されている。
銀鏡のある米良[めら]山地地帯は、焼畑・狩猟を生活の基本としてきた。近年は十二月十二日から十六日にかけて行われているこの霜月のまつりにも、狩猟文化が色濃く反映している。まつりに先立って狩ったイノシシの首を神楽の場に安置し、その前で夜を徹して神楽を行うのである。
十二月十四日の朝、神社境内に設けられた神楽の場(神屋[こうや])に「おしめ」が立てられる。おしめは神の依り代である。その下には、荒御霊[あらみたま]であるイノシシ、和御霊[にぎみたま]である米、餅などが安置される。そして、各集落からお面様(神面[しんめん])を捧げた行列が集まる。お面様が揃わないと、まつりは始まらない。
夜に入ると神楽が始まり、翌日午前十時頃まで行われる。舞うのは祝人[ほうり]。草分けの家を中心にした旧家の人々で、世襲である。村の男女が歌を掛け合う神楽囃子は、古代の歌垣を思わせる。
神楽は三つの大きい構成要素を持っている。一つは神々の降臨を願う神楽。面をつけないで舞われる。二つ目は真夜中から夜明けにかけて行われる、神々の降臨の神楽。神面をつけた神楽である。
三つ目は、夜明け以降に行われるもの。ずり面とよばれるリアルな面をつけ、ユーモラスな所作で生命の誕生や作物の豊穣をあらわす。なかでも三〇番目のシシトギリの神楽は、古風な狩人の装束をつけた二神が、シシ狩りの所作をする。「とぎる」とは足跡を追うという意味である。
このまつり最後の日、十六日朝、銀鏡川の岩場を祭場としてシシバまつりが行われる。イノシシの左耳の肉片七切れを串にさした七切れ肴を神に供え、その年に獲れた獣の霊を慰めるとともに、これからはじまる狩りの豊饒を願うのである。
©民族文化映像研究所/『民映研作品総覧』(はる書房)より転載