7/16(日)『みんなの学校』大空小学校元校長 木村泰子先生トークショー(中編)

2017年7月30日

【前回のトークより】

大空小学校の訪問客(ゲスト)に「大空の子供たちは学校でどんなことがあっても、職員室にさえ来れば何とかなる。学校の中でこの職員室が一番安心する場所」と説明した6年生のセイシロウ。「何で職員室に来れば、どんだけ困っても何とかなるの?」と質問したゲストにセイちゃんはどう答えたと思いますか?と、正解にポップコーンをかけた異例のクイズ形式のトークショーとなった。


ゲスト:木村泰子…大阪市立大空小学校 元校長(木村)

    森本美花…NPO法人 日本ゲートキーパー協会 理事(森本)

進 行:佐藤浩章…CINEMAChupkiTABATA 支配人(-)


・・・


お客さんB:

安心でいられるから?


これね、当てもんやからごめんなさい。正解がない事で語りたいねんけど、これはセイちゃんが言った事やから、「ブー(不正解)」なんですよ。何だろうなぁ〜?


-セイシロウの気持ちになって考えたらいいですか?


木村:

そうですね。そこでセイシロウが言った答え。


お客さんC:

みんなで何とかしようとしてくれるから。


木村:

あー、ちょっと近いかな。でも「ブー」ですね。


お客さんD:

自分の言いたいことを自由に言えるから。


木村:

そんなん、教室でも給食室でもどこでも言うてるから(笑)反対に自分の意見を言わんかったら「何でやねん。」と言われる。


(場内爆笑)


お客さんE:

「だって僕、ここで何とかなってるもん。」


木村:

あー、でもアイツの答えはちゃうかったんです。


お客さんF:

人が集まっているから。大人がギュッといるから何とかなる。


木村:

いやぁ、はい!ポップコーンあげます。いや、あげますって、うちのちゃうねんけど(笑)


(場内拍手)


木村:

でも、皆さん言わはったことがぜーんぶ答えなんですよ。でも彼の口から出た答えはね。

「だってここにはいつだって大空の大人たちが居ます。」だったんです。


-おお!プレッシャーでしかないですね(笑)


木村:後日、その一緒に居った養護教諭の先生に、「もしセイちゃんがね『だってー、ここにはいつも校長先生がいます。』って言われたらどうリアクションしようかと思ってたんですよ(笑)わかります?」と彼女に言ったら、彼女は「あんた早く大人になんなさい。」って(笑)


(場内爆笑)


木村:

職員室はもちろん教職員がいます。でも地域住民がいっぱい同じ空間に居るわけですよ。これがセイちゃんの言う「大人」です。

先生が間違ってることは、その場に居るほかに気づいた大人が子どもを救うんです。例えば「いやー先生、あんたの言うてんのは間違っとるで、この子それでな、困ってプレッシャーかかってんで。」と言わないかんところを、「先生に『うん』って言わないかんねん、私は違うと思うけど。」って黙る。何か、大人同士の気の遣い合いみたいなことになって、これって結構面倒臭くて時間がかかるんです。

こんなのが学校に固まると、職員室内が分断して「〇〇派」とか、お局さんが出て来たり、若い職員がいじめられたり…大体、職員室でいじめが起こってるから子どもをいじめるんですよ。そんな職員室をまずは…ここに(お客さんの)子ども聞いてるけど、まずは変えよう!って思ったんです。


私たちも自分のことを振り返らへんかったら、必ずそうなってしまうんです。自分のために子どもをこっちに向かそうとするからね。みんな人間って弱いからそうなるねんけど、その大人に関わるんじゃなくって、先生にがんじがらめにされている子どものところに「あんた大丈夫か?」って「いやー、今のは先生が間違っとるよなぁ。」と。その子に「先生が間違っとると思うから、自分の考え言い?」って。そうやって地域住民の大人が子どもに関わるわけです。

子どもは大人に気を遣うんじゃなくって、大人が間違っていることを含めた大事なことを、「あっ、何かこれでいいかな。」って学んでいくんですよね。そしたら、間違った先生をどうのこうのじゃなくて、子どもに直接関わって、この子が「ふっ」て安心して「ふっ」と前向くじゃないですか。

そのことを喜ばない先生は、居てたらアカン思います。だから、みんなが育つ。


-うーん。丸裸で一緒になる環境をつくるという事ですね。どこでもそうですけど、本当にそういった場所ができたらもっと人同士が繋がれますね。


木村:

学校って、地域じゃないですか。「学校が変われば地域が変わる。」ってそこなんですよ。地域が変わったら…地域はパッチワークのように繋がって日本社会を作っていく。だからセイシロウは、私の師匠ですよ。みんなそう思いませんか?(笑)

でもセイちゃんは特別変わった子ではなくって、大空の260人ほど居た中のたった一人なんです。ただ、その一人が260人居る。これが子ども。

何か「障がいのある子」「障がいのない子」「先生の言うことを聞く子」「先生に逆らう子」こういうくくりで子どもをみるのは、大人が子どもに対するとてつもない人権侵害です。そうなると、まともな感性を持っている子は学校には行きません。

今、全国で、普通の感性を持った子どもたちで学校に通えてない子が居る。「学校に行かない自分が悪いのかな?」って。やっぱり「1対大勢」やからどこに行っても自分を責めるんですけど。

私が言えることはたった一つ。「学校に行っていない子どもを『不登校』と呼ぶな。『不登校』という言葉は意味を成していない。学校に行っていない子は100%悪くない。それを大人が伝えてやって。」です。普通の空気があったら、子どもはみんなと学ぶことを拒否しなんです。でも、空気が間違ってるからその空気を吸うと、過呼吸で救急車で運ばれていくんですよ。そんな子が何人も大空へ通って来るんです。で、大空に来たら毎日普通に来てるんですよ。

「何であんた、前の学校通えへんやったのに大空に普通に来てるん?前の学校と大空は何が違うの?」って。何人もの子どもに私は教えてもらうんですよ。その子ども達が言うことは、北海道から沖縄の子、みんな言うことが一緒なんですよ!学校に行けてへん子どもは、「努力足らん」「我慢足らん」「コミュニケーション能力がない」とかわけのわからん人間勝手に色々言うけど、学校に行けてない、だから命あるねんけどね、この子たちみんなが言う言葉ってね、はい!答えたらポップコーン!!(笑)


-はい、始まりました!第二のポップコーンタイム(笑)


お客さんF:

楽しいから。


木村:

ブー(不正解)。

楽しいんですよ。だから来てるんだと思うんですよ。ケンカもするし苦しいこともあると思うねんけどね。


お客さんG:

安心の場だから。


木村:

あー、それは大人の言葉ですね。ブーです。


お客さんH:

ここには特別なくくり(枠)がないから。


木村:

きっとそう思ってるでしょうね。でもブーです。


お客さんI:

ここには居場所がある。


木村:

あー、それも大人の言葉ですね。


お客さんJ:

空気が違う。


木村:

いやー!!ピンポーン!!!


(場内盛大な拍手)


木村:

(お客さんの子どもに)ごめん、ごめんうるさかった今?そうなんですよ、いっつも私「もうちょっと控えろ。」って怒られるんです…おー、凄い!

「何が違う?」って聞いたら訪ねたどの子ども皆「空気」って言うんです。凄いでしょ?今日これを皆さんに持って帰ってもらったら…もうどんだけ幸せになるかと思うんですけど。「空気が違う。」って言うんですよね。

えっ?「『空気』って、どう違うか説明しぃ?」って聞いたら、「前の学校の空気は『牢屋』だ。」って言うんですよ。

私本当に馬鹿なんです。だから「牢屋ってアンタ行ったことあんの?」って(笑)


(場内爆笑)


-意地悪ですね(笑)


木村:

でも、行ったことないくせに「何で牢屋なん?」って思いませんか?だから聞くんですよ。

聞いたら、「先生、映画観てるやろ?テレビ観てるやろ?」って。「牢屋って映るやろ?」って言うんですよ。

「牢屋ってな、中に入ったら出られへんやろ?」これ言い当ててるんです。

苦しかっても教室から出られへん。見事ですよ。「では、牢屋の中でな、動いたら怒られるやろ?静かにせぇ言われるやろ?」

「で、牢屋の中でしゃべったら黙れ言われるやろ?」


-全部当たってます。本当だ。


木村:

でしょ?私、「よく分かりました」って。お見事ですよね。


あ!もう一個、クイズ!!


-また始まりました(笑)何ですか?


木村:

で、そこで私はその子たちに聞くんです。

「えー、そう、分かった。じゃぁ、大空の空気ってどんな空気?」

ポップコーンの準備を(笑)


-今、お客さんみんなが宙を仰ぎましたね。これ、逆に難しいかもしれません。何だろう。


お客さんK:

山とか、海とか。


木村:

あー、自然ですか、ブーですね。


お客さんL:

おいしい。


木村:

ブーですね。


お客さんM:

家。


木村:

これもブーですね。


お客さんN:

大空。


木村:

これもブーですね。


-へぇ、これも違うんだ。皆さん当ててください!当てないと進めません(笑)


お客さんO:

牢屋に対して、娑婆(しゃば)。


(場内爆笑)


木村:

素晴らしいけど、これもブーですね(笑)


お客さんP:

野原。


木村:

大人目線ですね。子どもは野原知らないんです。


-すいません、何かヒントをください。


木村:

ヒント。大空ってどんな空気と聞いたら「プシュッ」と言った。「プシュッ」と喋った。


(場内困惑)


お客さんQ:

スカッとした。


木村:

ブー。ちょっと惜しかったなぁ。もう降参?


お客さんR(子ども):

天国。


木村:

まぁ、アンタいい子やなぁ!大空の人間が聞いたらみんな「ありがとー」ってなるわ(笑)


お客さんR(子ども):

最初の文字は?(笑)


木村:

そうきたか(笑)じゃ、最初の文字は言わんと「何文字か」を言うわ。

その子が語った言葉、三文字!


お客さんR(子ども):

じゃぁ、地獄。


他の子ども:

何で学校通って死ぬんだよ(笑)


お客さんS:

きれい!


木村:

ついその言葉に反応するけど、ブーですね。…盛り上がって来たなぁ(笑)


お客さんT:

普通。


木村:

イヤァー!!!当たったァァァー!!!!!

びっくりした!


(場内盛大な拍手)


-いやー、びっくりしました!「普通」よく出ましたね。

あっ、実はもう一人同じタイミングで「普通」と答えた方がいらっしゃったようです。


木村:

ポップコーンを提供していただいてどうもありがとうございます。


-いえ、ポップコーンクイズ、ずっと続けてもいいんですけどね(笑)

では、皆さんこの機会ですので、木村先生にお聞きしたい事がありましたらガンガン聞いてください。

手を上げて…はいぞうぞ。


・・・

ポップコーンをかけたクイズの時間となったトークショー。すっかり盛り上がってしまいました。

この続きはいよいよ最終回。後編をお楽しみにお待ちください。

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